頚椎捻挫・むちうち損傷

むちうち損傷とは、その発生状況から呼ばれる名称で、元来軍艦の艦載機をカタバルトで
急発進させたときに起きやすいものとして、 1928年にアメリカで提唱された病名である。
すなわち急激な後方からの外力により、頚部に鞭がしなるような過伸展とそれに続く反動の
過屈曲運動がおこり、軟部組織の損傷が起こることをいう。
ところが車社会の到来とともに交通事故が多くなり、わが国でも1958年ごろから追突自動車事故後の頚部の疼痛に対して「むちうち症」という診断名が用いられるようになった。
今日では頚椎が生理的可動範囲をこえて受傷したものは頚椎捻挫、それ以下のものには頚部捻挫
と呼称し区別するのが一般である。また、総称的な診断名として外傷性頚部症候群と呼ぶことも
容認されている。
定義:頚椎捻挫は「頭部・頚部に直接の外力が加わることなく、体幹に加わった衝撃力によって、
頭という重い物体を支えている頚椎に過伸展・過屈曲が強制され、そのためにおこる障害で
X線検査上、脱臼や骨折が明らかでないもの」と定義されている。
成因と病態生理:頚椎捻挫の場合、頚部の筋肉、靭帯、椎間板、関節包などの軟部組織の損傷が
ほとんどであるが、それに頚神経根、脊髄、交感神経などの症状がつけ加わることもある。
むちうち損傷ということになると、これに心因反応をも加えた病態を示唆する用語となろう。
症状:一般には次のような病型の分類がなされており、おのおのに症状の特徴がある。

① 頚椎捻挫型:
頭痛・頚部痛・頚椎運動制限の三大症状があり、それにとどまる。
② 頚神経根症状型:
後頭部、頚部、背部、上腕から手指にわたる痛み、こり、しびれ、脱力や頚椎運動痛など頚神経症状が目立つもの、神経支配領域の分布に矛盾しないとき、また日によってくるくる変わらないときにその存在は信用できる。
③ バレー・リュ-症状型:
頭痛、頭重感、めまい、耳鳴り、難聴、悪心、嘔吐、眼振、眼痛、霧視など自律神経症状の目立つ病型
④ 脊髄症状型:
四肢不全型、歩行障害、筋肉萎縮(脊髄内前角細胞障害)膀胱直腸障害などを呈する。

診断:神経学的所見を中心にしっかりした診察を行うことで診断は容易である。頚椎のX線撮影は
必須である。出来れば6方向、上位頚椎損傷を疑う場合には開口位を追加して7方向撮っておくのが
後日に際しても望ましい。
また、できることならMRI検査を行う。CT検査は骨折などの骨病変を念頭に置くときは有用である。
X線検査やCT検査で脱臼、骨折のないこと、MRIで脊髄、神経根損傷(圧迫)、ヘルニアなどのないことを確認するべきではなく、それぞれの特異的な疾患名を用いて、それにふさわしい治療を選択する。
治療:原則は保存的治療である。急性期には安静と脊椎カラーによる固定を行う。
また、鎮痛薬の内服と外用、抗炎症薬の内服もルーチンである。この時期には通常の頚椎牽引は
症状の悪化をもたらすので禁忌である。
早期の頚椎捻挫症状には、鎮痛薬主体に簡素に行い、早めにもとの生活に戻す。身体化現象が現れたら、精神的ケアとともに、抗不安薬や眠剤へと切り替えていく。ほどほどの期間で、ある程度の自覚症状を残したまま「症状固定」として理解させて事故扱いを終了すると、残ったはずの症状もまもなく消えていく。逆に、点滴やカラー固定、頻回の通院治療、入院安静、長期の休業、「むちうち症」の宣言、愁訴の一方的な否定などは重症感と心理的ダメージを与えて身体化現象の誘因、悪化因になるので避けるべきである。また手術は一時的な症状寛解後、ほぼ確実に症状再発するので行うべきでない。
予後:病状の定義から、頚椎捻挫であれば、初期の的確な治療が行われればほぼ100%が治癒すべきものである。しかしながら実際には治療期間6ヶ月を超える慢性化例が存在する。原因は初期治療の失敗、頚椎捻挫ではない頚椎症などの疾患の混入や見逃し、患者の性格の偏り、加害者や保険会社とのやりとりといったものが単独あるいは複合的に関与する。

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