腕神経叢障害


オートバイ走行中の転倒、スキーなど高速滑走のスポーツでの転倒、機械に腕が巻き込まれた後などで、上肢のしびれ、肩の挙上や肘の屈曲ができなくなったり、時には手指も全く動かなくなったりします。骨盤位分娩や肩難産で生まれた乳児が肩の挙上や肘の屈曲をしません。
いずれの場合も、腕神経叢のどの部位が、どの程度損傷されるかにより、それぞれの損傷高位に応じた運動麻痺、感覚障害や自律神経障害があらわれます。肩の挙上と肘屈曲ができないものから肩から上肢全体が全く動かないもの、外傷後徐々に軽快するものから全く回復しないものまで、いろいろあります。
腕神経叢は、首の部分の脊髄から出て来る第5頚神経から第8頚神経と第1胸神経から形成されます。これらの神経根が脊柱管を出て、鎖骨と第1肋骨の間を通り腋の下に到達するまでの間に神経線維を複雑に入れ替えて、最終的に上肢へ行く正中・尺骨・橈骨・筋皮神経になります。
腕神経叢がある側頸部から鎖骨上窩の腫脹や疼痛があり、上肢の運動麻痺や感覚障害があるときには、腕神経叢損傷の可能性があります。詳しい神経学的診察・検査で、腕神経叢のどの部位が、どの程度損傷されたのか判断します。
損傷高位と範囲により、上位型、下位型、全型に分けられます。
一般成人の腕神経叢損傷では、全型が多く、次いで上位型で、下位型は少ないです。分娩麻痺では上位型が8割を占め、全型は2割と少ないです。
自然回復が全く期待出来ない症例では、神経移植術などにより損傷部の再建が可能な症例か、それが不可能な神経根引き抜き損傷か、早急に判断しなければなりません。

参照:日本整形外科医学会